原神第5章・栄華のバトルアリーナを読了。このお話、屋上に屋を架した大蛇足へのさらなる追加蛇足から、非実在ヘビの足首にリボンまでかけだしたみたいなもので、おのれをいつわらざるホンネの感想といたしましては、「いつまでもナタをこすりつづけてんと、さっさと次の国へ行こうや!」でした。それもこれも、制作ディレクターがマップ導入順の進行管理に失敗して、豊穣の邦での冒険より先に戦争の完全終結を語るハメになってしまったことが、悪印象を与えている主な原因です(妄言)。ヴァレサなる新キャラも、「ピンク髪に恥じらい多めの、怪力で大食いなのに小心な牛娘」という萌え要素をギガ盛りにした、原神世界というよりは昨今のVtuber界隈を模したみたいなキャラになっていて、ホヨバから「オタク君、こういうの好きでしょ? 性癖でしょ?」とウワメづかいに詰めよられても、キリッとした表情で「いや、あの戦争をともに戦わなかった者は、仲間でもなんでもないんだが?」と冷静に返答できてしまうほどの無感動ぶりです。なんの感情もINKEIの傾斜も動かぬのに、豊穣の邦のマップへ干渉できる竜の配置が絶妙に不便なせいで、探索要員としてガチャを引かざるをえないという鬱陶しさは、原神らしからぬユーザー・フレンドリー・ファイア(なんじゃ、そりゃ)な調整になってしまっているのです。終戦後のナタにおいて、登場するたびに炎神の格がどんどん下がっていくのも個人的には大問題で、古い人間ゆえに古い映画で例えておくならば、バグダッド・カフェにおける「トゥー・マッチ・ハーモニー!」の絶叫のあと、さらに2時間ほど映像が続いたようなゲンナリ感だとでも表現できるでしょうか。おい、ヴァレサ! オマエはノット・コーリング・ユーや! 「大戦終了後に、満を持して完成した決戦兵器」みたいなキミの立ち位置は、いったいぜんたいどないなっとんねん! ポッと出ェでがんばらなアカンのに、「演技は苦手だから、後方支援にまわるよー」じゃないんや! それこそ、今回が最後の出番なんやから、ナタの諸先輩方を押しのけて、もっとガツガツ前にいったらんかい、ボケェ!
あと、遅ればせにアニメ版メダリストの12話を見たんですけど、マイ・フェイバリットであるところの「見なよ…オレの司を…」のコマが、思わずもれでる内面の声や表情のうるささへのキャプションではなく、直球にセリフとして処理されていたのには、心底ガッカリしました。音声エフェクトをかけてホーミーみたいに二重処理するとか、漫画版そのままに背景へ書くーー事実、「絶対に認めさせるマン」はそうなっているーーとか、やり方はいくらでもあったでしょうに、元々の主人公のセリフをオミットする最悪の選択をしてしまっている。メダリストという作品が大好きなので、多少の不出来ならば「黙して語らず」と思っていたのですが、このアニメ版は声優の生声”以外”のいっさいを、漫画版へ足すことができていません。原作の描線や構図を生かさない、簡素な棒立ちのバストアップによる会話のやりとりもそうですが、なによりひどいのはCG丸出しのスケーティング・シーンです。無機質に引いたカメラから、淡々と3Ⅾモデルへ付けられたモーションを追うばかりで、漫画版の見開きや大ゴマが持つカメラと構図のキレ、擬音のデザインやデッサンの歪みから醸成される、あの圧倒的なまでの情感を致命的に欠いている。この12話においても、外野でほめまくるモブのセリフがひどく浮いて聞こえるぐらいの、あんなフニャフニャな暗黒舞踊モドキを見て、リオウ君がツカサ先生に心酔するようになるわけないじゃないですか!
イライラが止まらなくなってきたので、とばっちり的に単行本未収録のアフタヌーン本誌における展開へ言及しておきます。あのさあ、こんなことになるぐらいなら、北島マヤと姫川亜弓みたく最初からダブルヒロインを明言するか、いっそヒカルちゃんのほうを主人公にしておけばよかったじゃねえか! こっちは12巻をかけて、すっかりイノリちゃんの保護者か熱心なサポーターみたいな気持ちにさせられてんだよ! ヒカルがイノリを物心両面からボコボコにくらすシーンがしつこく何話も続きすぎて、作り手の「イノリの声優にアテレコさせるための悲鳴が書きたい!」というサドマゾ性癖を越えて、ヒカルの言動がほとんどサイコパスになってんだよ! メダリストが正しく終わるためには、「圧倒的な経験と才能の違いを、コーチによる差分でかろうじて上回る」展開しかねーんだよ! それが近年の艦これイベント海域の甲難度みてえに、どうひっくりかえしたって初心者スケーターの勝ち筋は、完全に消えてしまってんじゃねーかよ! 「12年選手の甲勲章32個持ちベテランに、4月からはじめたばかりの初年度ルーキーが、数年前に引退した提督からコーチングを受けながら、次回の夏イベント甲難度でRTAクリアに競り勝たねばならない」みたいな状況にしやがって! 練習ばかりで芽の出ない下積み期間が長くなりすぎて、イノリちゃんを見るまなざしに、かつて「自分がテレビで鑑賞したときには、なぜか必ず転倒する実在のスケーター」へ感じていたマイナスの気持ちが、否応に混入するようになっちまったじゃねーか! キャラクター全員の内面を等価に掘り下げたら、主人公が特別な理由なんてぜんぶ消えちまうに決まってんだろーがよ! こちとら、「実家が太くて、慶應幼稚舎から親戚のコネを使って、一部上場企業に就職」みたいな”血統書の物語”から逃避するために、フィクションを読んでんだよ! たのむから、庶民で雑種のイノリちゃんを、ひたむきな努力だけで勝たせてやってくれよ!
すいません、ほんの少しだけ激昂しすぎてしまったかもしれませんが、いまは「おのれの寿命とのチキンレースを避けるため、完結した作品をしか読まない」という誓いをやぶってしまったことに、ひどく後悔を感じております。しばらくはメダリストから離れますので、イノリちゃんが「いまだかつて敗れたことのないヤンデレ系サブヒロイン」をブチころがして金メダルをとったら、そのときはそっと教えてください(グラップラー刃牙みたいな主人公補正マシマシの勝ち方だったり、「イマジナリー6回転アクセルの着氷の論評」みたいな話になったら、教えないでください)。