世界はあまりに膨大になりすぎたため、ただの羅針盤にさえ重大な意味がある。

愛のうた


ダージリン急行

映像作家として見るべきなのは重々承知ながら――欠損あるいは過剰を抱えた家族を、心理学と宗教以外の方法で救済しようとすると、こういう作劇になるのかな。ザ・ロイヤル・テネンバウムズよりは、わかった。荷物ぜんぶ落として電車に乗る場面がすごくいい。
ミスト

以下、ネタバレ。この年齢になると、ノンフィクションでもないのに子どもが死ぬってだけでもうダメ。作者か設定に殺されたという以上の感想を抱けない。散見する高評価は、若年層かキング原理主義者によるものに違いあるまい。
ファーストフード・ネイション

ドキュメンタリーだと思ってたら、まんまと騙された。パテに唾を吐く店員の描写をはじめとして、演出と脚本に由来する不快感をファーストフード店のそれに転化する作りは、到底フェアとは言いがたい。移民や低所得者の道徳観と肉欲を類型的に描写し、業界の倫理欠如とオーバーラップさせて読ませる誘導も卑劣だ。俺はこの映画を見て、明日からもハンバーガーを山盛り喰う決意を固めたぜ!
ゼア・ウィルビー・ブラッド

言葉少なな二時間半のハリウッド劇は偽装。最後の十分を見せるためだけに、それはある。"I'm finished."から逆算された、極めてミニマムなアングラ劇がこの作品のすべて。
バンテージ・ポイント

任務遂行のためなら味方も殺す。アメリカ大統領誘拐を謀るそんな非情のテロ組織メンバーが、少女を前にアクセルを踏まずハンドルを切るってどないやねん。黒人のオッサンもすごいロリコンくさい。重度のペド映画認定。
SIREN: New Translation

日本の山村にトラウマを持つ小生は、気がつけば半日ほど伊東家を散策していたのです。すべての景色が、胸苦しい。
ヒトラーの贋札

舞台設定こそ強制収容所だが、考証的にではなく、己の生殺与奪を握った権力への処し方を描く心理劇として見るべき。具象を生きるか、抽象と死ぬか。私が誰に感情移入したかは諸君の想像へ残そう。
インサイダー

ある概念を表現する言葉は、その喪失や不在から発明される。騒動の中心は極めて矮小だ。それが過大なテーマとして語られるとき、意図せぬ喜劇の様相を呈する。タバコ会社は現存するすべての肺胞がニコチンに黒く染まるまで販売をあきらめないで欲しい。幾分は好ましい未来を期待するために。
ノーカントリー・フォー・オールド・メン

作品テーマは冒頭の独白とタイトルに明示されており、難解さはない。だが、邦題が原題を無意味に省略したことで、視聴前に不要なミスリードを与える。もっと文芸路線なのかと思ってたよ。エンターテイメント全開だぜ!
魔法にかけられて

ディズニー渾身のセルフパロディ。ピクサーがかすむほどに徹底している。もはや陳腐に堕したディズニー的世界観がパロディによる相対化を経て再生する過程は、ちょっとすごい。既存の古い権威たちは、この方法論を見習うべきだろう。
マーゴット・ウェディング

憂鬱な現在は薬で、歪んだ過去はセラピーで解決。息子が妹と寝ようと、隣人が屋内で豚を解体しようと個性。すべては対症療法。少なからず肯定的な視点が含まれているのが、恐ろしい。救済は包括的なもの。西洋人が救われることはない。Maggot at the wedding.
フライボーイズ

実話を元にしているのはエンドロール直前の3分だけです。あとは製作者の大妄想ラクガキ大会だぜ! キャラの立て方はさながら漫画。幕間・戦闘・死をワンセットで繰り返す構成はさながらゲーム。空いた口はついにふさがらなかった。しかし、ここが重要なのだが、面白い。
迷子の警察音楽隊

異国感。間。滑稽さ。気まずさ。外国語での意思疎通にまま訪れる、互いの胸襟を開いた深い理解という錯覚。2008年上半期の私的ベストです。
DOG LIFE&DOG STYLE

原作モノと考えない方がよい。戦争の不幸が画一的? 不幸にバリエーションがあると思ってんのか、馬鹿。
チャプター27

事件直前の三日間における行動の事実だけを追う構成は、遺族やファンの感情へ配慮するあまりか。しかし、冒頭のモノローグを突き詰めなければ、「作る必要があったのか?」という反感しか残さない。凡人と天才の半生を積み上げ、それが交錯する瞬間をこそ描くべきだった。その意味で、見所はイマジン的というよりマシニスト的である。
 

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