リアル・スティール
ロッキー+オーバー・ザ・トップ+プラレス三四郎。え、そもそもロボット物である必然性が感じられないだって? この大馬鹿野郎ッ! それを言い出したら、二足歩行のロボットを本邦の大企業が大真面目に大枚はたいて作る客観的な整合性なんざ一ミリもねえよ! 結局、理系なんてのは論理でもなんでもねえ、ガンダム近辺のロボット群に呪われた連中の文学的感傷でできてんだよ! 言ってみりゃ、男のロマンなんだよ! ともあれ、全国一千万の理系おたくa.k.a.超悪男子諸君にとって、必見の作品であることだけは間違いない!
the definitive SIMON and GARFUNKEL
ただ鎮魂を願う心の静謐さを、いったい何に託せばいいだろう。あれは小学校に上がる前だったろうか。テレビの子ども向け番組から流れていた、透明な歌声を思い出す。意味もわからぬまま、ただ聞き入った。あの頃、幸福に、生きることに、何の条件も承認も必要なかった。幼少期の幸せな静けさと結びついたあのハーモニーこそが、鎮魂にふさわしい――ギャアーッ(左目を押さえて床を転げ回る)! 永く封印せし深奥の秘に共鳴し……忘却の彼方より来たりて我が懊悩を増幅させるッ……!! 其の深淵での逢瀬が記憶……慄然たる極寒との邂逅を、成熟せし我が魂縛へ魔術の如く齎す……當に……冬の散歩道……!! 何だ此の……懐かしくも疎ましい……禍々しく律動する、冥府の詩句は……ッ!! 聞いているあいだずっと、額と両脇からネバネバした変な汗が出てきて止まらない! どの歌詞もすごい中二病で、その病理のあり方が日本的なことに何より驚かされた! そういえばポール・サイモンって、よく見るとなんか「まさる」って感じだしな! 「(舌たらずの声で)ねえねえ、あんちゃん! きよしこの夜のバックに悲惨なニュースを流してみたらどうかな!」「(爆発した頭髪で)冴えてんな、まさる! すげえ風刺がきいてるぜ!」 「(青鼻を垂らしながら)えへへ」 なんかもう、鎮魂とかどうでもよくなった! 鎮魂って、そういやチンコと音が似てるもんな! (ヘビメタ風の衣装をした男がエレキギターをへし折りながら)アイ・アム・ア・ロオオォォォォック!
カイジ2
たぶん、原作の展開を知らない人間が最も楽しめるでしょう。そして、私はその人間でした。あの、邦画のシナリオの出来を云々するのも野暮ですので、ひとつだけ言わせて下さい。胴元がルールと支払いに誠実過ぎます。
ミッション・インポッシブル4
あれから一年、本邦にとって記念すべき今日、塩漬けの核弾頭よりも稼働中の原子炉がずっと危険であることがわかり、核技術の流出よりも原発へのテロがはるかに現実味を持つようになってしまった世界で、このフィクションは私たちにとってむしろ逆説的な批評性を帯びて迫って――こねえよ! この毛唐ども、みじんも俺たちのことなんて考えてねえ! エヴァ風に言うなら「私たちはいらないのよ! イーサンだけがいればいいのよ!」であり、島本和彦風に言うなら「なぜ地上130階にサーバールームを作るのかって? ハハハ、その方が盛り上がるじゃないか!」であり、某スイマー風に言うなら「ちくしょー、なんも考えられねー!」であり、小林秀雄風に言うなら「トム・クルーズのバカは疾走する。観客は追いつけない」である! イケメンのバカ、うなるほどの富と名声を持ったハイパーバカによる、「とりあえず味は考えずに具材を全部入れてみたアクション闇鍋」がこの映画なのだ! この時代にクレムリンを爆破してみようなんてプロットを思いついて、じっさい爆破してみるなんてもう頭が悪すぎる(褒めてます)! どうでもいいけど、ゴーストプロトコルって何だろうね! 見終わったいま、そんな瑣末なこと本当にどうでもいいんだけどね!
ロック・ユー!
「この世界でお前は勝てない。お前に勝てる世界などない」。プロレス+大リーグ+ロック+馬上試合。何度見てもグッと来る。そして何度見ても、私は鍛冶屋の娘と結婚する。
三銃士
飛空船の意味なし! 何も考えていない! だから、何も考えなくていい! ザッツ・エンターテイメント!
マネーボール
弱いものが勝つためには、既存のルールを変えるしかない。実のところ、みんなそれはわかっている。ただ、何の権威もない、誰にも証明されていない新しいルールと添いとげ、心中する覚悟のある誰かを持つことが最も難しい。勝利は、リスクを最小限におさえることを最優先に考える官僚の仕儀から、はるか遠いところにある。
宇宙戦争
母性は本能だが、父性は近代の婚姻制度が作り出した虚構に過ぎない。己がクズであることを自覚する父親は、きっと何か感じるところがあるだろう。そして、ダコタ・ファニングの演技がすべてのSFXを凌駕する。
ドラゴン・タトゥーの女
横溝正史ばりに複雑な人物相関なのに、ほとんど謎解きに絡んでこなくて拍子抜けした。もちろん、なぜかエンドロールまでデビッド・リンチ監督作品だと思いこんでいた私の、身構えた視聴態度が主な理由であろう。あと、吹き替え版だったせいかリスベットのキャラ造形が黒い綾波レイにしか見えなくて困った。あれ……フェラとレイプのシーンを見た時……なんていうか……その……二次元愛好なんですが……フフ……勃起……しちゃいましてね……
あしたのジョー2
「泪橋に来る前のことは、よく思い出せねえんだ」。ぼくは日々をからっぽに生きていて、昨日のことさえよくわからない。空費した時間は、どこにも刻まれないまま消えていく。日々を八分の力でやり過ごすうち、いつしか目減りした自分が本当の自分になってしまった。どうやってここまで生きてきたのか、よく思い出せない。
ブラック・ジャックFINAL
故人たちに最大級の敬意を払い、未完の仕事を残された人々で継ごうとする試み。それはたぶん、真摯な追悼に端を発していた。ときにある喪失は、この世界にとって決して取り返しがつかない。粗悪なレプリカを前に、ただ悲しみだけが深くなった。
ツリー・オブ・ライフ
「このクズを撮影したのは誰だぁっ!! 物語以前の空虚極まる台詞の断片を思わせぶりな映像と宗教音楽で二時間強に引き伸ばし、神が人に与え賜うた映画芸術を完膚なきまでに愚弄した上、神が観客に与え賜うた知性を根底から嘲弄したのはっ!!」「あなた、落ち着いて! 観客が自らの生活と神の恩寵を結びつけて感情移入できるように、そして人類誕生以降繰り返されてきた父と子の相克を普遍的に描くために、わざとドラマ性を抑えた表現にとどめているのかもしれないじゃない!」「ならば無名の俳優を使うべきだろうが!! ブラッド・ピットとショーン・ペンを主演にしている時点で、そんな言い訳は許されんわ!! しかも神がショーン・ペンに与え賜うた演技という恩寵へ一切の敬意を払わず、彼に演技をさせないまま幕を下ろすなどという冒涜、思い上がりを許すわけには……なに……テレンス……マリック……だと!?」「あなた、急にどうしたの?」「ええい、腹が立つ!! ワシとしたことが、事前のリサーチをぬかったわ!! シン・レッド・ラインの監督ではないかっ!!」「ええッ! 人並み以上に映画を見ているあなたが耐え切れず、生涯でただいちど上映途中に席を立ったという、あのシン・レッド・ラインの?」「そうだ!! 泥酔後のタルコフスキーにさえ眠ったことのないワシが上映中、何度も意識を失うという屈辱を味わわさせられた、あのテレンス・マリックだ!」「ただでさえ場末のインターネットで普段から繰り返し辛酸を舐めさせられているあなたに、そんなひどい仕打ちを……ゆるせない!」「その通りだ、ゆるせん!! しかし、何よりゆるせないのは、主よ、私自身です。なぜなら死者への黙祷を捧げるべきときに、私はこのクソ映画への怒りをただ身内へ充満させていたのですから……おお、罪深き私を、どうかゆるしたまえ」
猿の惑星 創世記
私たちの誰もが一度、両親によって殺される。この低予算映画が多くの人の心を打ったのは、私たちの誰もが通る、養育者によって社会化されるときの、自我を殺されることに対する声なき抵抗を象徴的に描いているからだ。それを証拠に見よ、サイレントムービーと見まごうばかりの、なんという台詞の少なさか。
カンフーパンダ2
続編ゆえに許される冒頭からのハイテンポな展開へ、次々に畳み掛けるアクション、最後まで途切れないテンション。すべてに渡るあまりの流麗さが逆に高度な技術を高度に見せないのは、もはや達人の域だ。このレベルの作品がサラッと世に出て、続編ゆえの市場縮小からほとんど話題にも上らず忘れられていくことに、そら恐ろしさを禁じ得ない。エンターテイメントが水のように消費されていく。八千メートル級の山頂から徒歩で持ち帰った極上の雪解け水も、庭に置いた空き缶に溜まる泥混じりの雨水も、ただ同じ水として消費されていく。いや、現状を見渡せば泥混じりの方がフックがあって好まれる傾向にあるのかもしれない。私は昨今の「視聴を切った」みたいな言い方が反吐の出るほど嫌いだが、この表現へ何の臆面も無い、受け手優位の状況の中でモノを作らねばならない恐怖は、いかばかりかと思う。例えば、マウントポジションでボッコボコに殴られながら、「なんかおもしろいことしろよー、おもしろかったら殴るのやめてやるからよー」と言われて、半笑いで芸をする感じ。だいぶ話がそれまくったが、作り手の尊厳という意味合いから、カンフーパンダ2はスーパー・リコメンド、超オススメ、デース!
シュタインズゲート
オフレポ後編作成のため、iPhone版を社畜仕事の合間合間でプレイ。ものすごく狭い客層めがけて、ものすごく賞味期限の短いボールを投げている感じ。しかもマウンドとベースの半ばの位置から、受け手がこれは野球だと気づかぬうちに放られるがゆえの、相対的な豪速球。実際、2012年3月現在、すでに少し古くなり始めているのが恐ろしい。文字通りの前世紀からネットに生息する私は大いに楽しんだが、例えば何の素養も無い家人がプレイした場合、意味のある物語として成立しているとさえ感じられないだろう。エニウェイ、世界広しと言えど、ジャパンのギークスにしかクリエイトし得ない、本番に至らぬ特濃カウパー、ディスコミュニケーションを超えたアンチコミュニケーションの精髄が凝固した作品と言えるデショウ(褒めてます)! でもでも、ネット上で絶賛の評ばかりなのは、ファイト・クラブと同じニオイがするニャン!
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